先日の親類の葬儀前。
実は、私自身に非常に悪質で卑劣な脅迫にあっていた。
私の性格からしたら、テレビで連日やっているあおり運転のヤローみたいな奴だったら、「んな奴、拳骨でいったったらエエねん!」と、およそ元格闘家らしからぬ思考になる。
ところが、そうもいかない相手なのである。
事の経緯。
嫁のお母さんは、大阪で独り暮らし。
正月とお盆と、年に2回、数日間訪れる。
お母さんの所にいると、ほぼ何もしなくても食事やコーヒーを出してくれたりと、非常に居心地がいい。
嫁も機嫌が良いし、お互いWinWinの関係でいられる。
お母さんは、嫁と知り合った頃から一人だった。
結婚の許しを請う為に、初めてお母さんに挨拶に行った時。
結婚の挨拶が終わり、緊張から解放されて、急に眠くなった私。
「コブシさん、遠慮しなくていいよ!寝ていいよ!」
お母さんの言葉を真に受けて、スーツのまんま本当に一眠りしてしまった私。
それくらい心優しいお母さん。
しかし、若かりし頃は、日本刀を・・・やめておこう。
そんなお母さんを、私は・・・。
私の悪い癖・・・“怒られる”と“笑い”を天秤にかけたら、“笑い”をとってしまう。
それも、ハンカチ落としを素早く取るが如く躊躇なく。
お母さんの口癖。
何かをしてくれたり、頼んだ時。
「コブシさん、コーヒー飲むか?」
「はい!お願いします!」
「よっしゃ~。」
この「よっしゃ~。」の声量が絶妙に聞こえるか聞こえないかの大きさなのである。
そして、イントネーションに独特な癖。
おそらく、独り言が少しボリューム上げ過ぎみたいな感じ
前から、気にはなっていた。
そして、今年、とうとう禁断の笑いの果実に手を出してしまった。
お母さんのいない岡山で、子供たちや嫁から頼み事をされた時。
「よっしゃ~。」
一瞬、間が空き、私がお母さんのマネをしているのに気付き、嫁子供大爆笑!
心の中でまた、「よっしゃ~。」
これがまた、ウケるウケる。
もう、一度手を出した禁断の果実を止める事は出来なかった。
まさに、笑いの乱獲状態。
そして、もう1つの禁断の果実。
お母さんは、胴体に比べて足が長い。
別に、悪気はないのだけど、少し面白おかしく表現してみた。
「お母さんって、ズワイ蟹みたいなスタイルよな~。」
「うっわ、パパわる~!」
とか言いながら、ウケるウケる。
そして、乱獲。
あくまで悪気は・・・有りすぎるわな。
しばらく、「よっしゃ~」と、ズワイ蟹で思う存分笑いを謳歌した私。
「パパ、おばあちゃんに言っちゃろ~!」
子供や嫁に、そう言われても、お母さんに会うのはまだまだ先の話と安心していた。
そして、とうとうXデーがやってきた。
今月の23日に、お母さんが来岡する。
「パパ、おばあちゃんに“よっしゃ~”と“ズワイ蟹”言うからなー!」
娘が、意地悪そうな顔で私に言った。
「べ、別に構へんよ~!」
〈お願い!言わないで!〉
「おばあちゃん、怒るで~!」
「エエよ、別に・・・。そんかわり、おばあちゃんとの関係が悪なっても知らんからな!」
〈お願い!言わないで!〉
大人げない理由で抵抗する私。
「よっしゃ~。」は、まだ、シャレで済む。
しかし、“ズワイ蟹”は・・・完全に悪口である。
お母さんが来岡される1ヶ月前くらいから、子供たちの脅迫が始まった。
特に娘からの。
「パパ~!お茶持ってきて~!」
私が、少しでも渋ろうものなら。
「パパ~!エエんやな~!おばあちゃんに言うで~!持ってきてくれたら言わんけど!」
「わかった、ホンマやな!これが最後やからな~!」
〈お願い!言わないで!〉
このやり取りが、何度繰り返された事だろう。
息子はともかく、娘はタブーをひょい!と飛び越えてしまうキライがある。
そのタブーを越えても“笑い”を優先する・・・私の直系だから仕方ないか。
「パパ~!〇〇して~!してくれへんかったら、おばあちゃんにズワイ蟹言うで~!」
「あんな~、別にズワイ蟹って言うのは、おばあちゃんの足が長い言うてんやから、悪口とは・・・」
本人目の前にして、「お母さん、ズワイ蟹みたいに足長いですね~」・・・言えるわけない。(笑)
完全に面白おかしく揶揄している悪口である。
「パパ~!〇〇して~!せーへんと・・・」
「お前、ホンマ、これ最後やからな!」
この無限ループ脅迫が止まらない。
こんなん、陰でズワイ蟹呼ばわりしているのがバレたら・・・シムケンのように、日本刀を抜いて、「テメエ~、ズワイだかタラバだか知らね~が、人の事、蟹呼ばわり・・・」・・・これが怒られるんやな、やめておこう。
今から、23日が怖くて、戦々恐々とした日々を送っている。
・・・というわけで、結局、親類の葬儀があり、お母さんの来岡は中止となった。
娘も空気を読んで、お母さんに言わなかった。
一件落着!