名誉ある撤退 〈2〉
「ガチャ!!」
嫁が、勢いよく居間の扉を開けた。
「アンタっ、何してん?」
「お、おぉ・・・ど、ど、どしたん?」
そこには、捨てられた仔犬のような目をして、パンいちでソファーに正座し、テレビ画面には、NHKの囲碁の打ち手解説。
言っておくが、季節は冬。
パンいちで、いる事自体が違和感アリアリ。
震える手でグラスの飲み物を持ち、引きつった顔で取り繕っている私がいた。
「アンタ、何見てん!シてたやろ!」
「べ、べ、別に~・・・。」
「アンタ、囲碁なんかせーへんやん!」
下半身は、絶賛放出中・・・だった。
嫁の事後談話よると・・・。
居間の扉は真ん中に細長くすりガラスが入っている。
その扉のすりガラスに私が素早く動いている残像が見えていたらしい。
そして、扉を開けると、何事もなかったかのように取り繕って、震える手でグラスを持っていた私。
まぁ、結局、ちょんバレで、シてた事はバレたけれど、辛うじて最中は見つからなかった。
何をどうしたのか、記憶はない。
人間って、追い込まれたら何とかなっちゃうもんなんだなぁと感心した出来事だった。
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