コブシのブログの新着ブログ記事
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お互い手を出し合ったままゴング。 それぞれ、自分のコーナーに戻った。 緊張の糸が切れたからか、私はコーナー近くで、くずれるように倒れそうになった。 会長に支えられて、なんとかコーナーポストの椅子に座った。 こんなに限界まで、出し尽くしたのは初めてだった。 「ありがとうございました!」 Y選... 続きをみる
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そして、迎えた試合当日。 実践の勘、スタミナなど、リングに上がるにあたっての総合的な材料を整える事が出来た。 いや~3ヶ月しか調整期間がなかったから・・・と、言い訳できないくらい仕上がった。 自画自賛するわけではないけれど、あ~やっぱり俺はプロだったんだなぁ~と思えた。 会場には、T君のファ... 続きをみる
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私は、この試合が決まってやらなければいけないと思っていた。 T君が自殺した現場に手を合わせに行く事。 自殺する事はよくない。 自分だけ死んで、楽になるかもしれない。 残された人たちの悲しみ、無念さ。 そういう事を考えれば、自殺は卑怯だとも思う。 しかし、人間というのは弱い生き物。 こうやっ... 続きをみる
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私は何か因縁をつけに来たと思っていた。 すると、リーダーらしき入れ墨をいれた男が言葉を発した。 「プロの方ですか?」 私の動きを見て、そう思ったのだろうか? 「はい、ブランクはありますけどね。」 「試合、近いんですか?」 「3ヶ月後です。」 「頑張って下さい!お先、失礼します!」 男... 続きをみる
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そして、最初で最後のつもりで上がった7年振りのカムバック。 それで、私のボクサー人生は終わり・・・のはずだった。 T君の死・・・。 最後の試合から一年間、結婚や自分の治療院を開院するため、体をまったく動かしてなかった。 3ヶ月という短い期間で、再びリングに上がらなければならない。 間に合う... 続きをみる
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数年前に抱いていた「わだかまり」。 でも、心のどこかで、あれは何かの間違いで、私の勘違いだったんだ・・・と思いたかった。 しかし、それを確かめる勇気はなかった。 Kさんとの思い出は思い出として、心にしまっておこうと思った。 そして、あるきっかけから始めたFacebook。 昔のSジム時代の仲間... 続きをみる
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KさんとはSジムで、階級も同じ、デビュー戦も同じ時期、ファイトスタイルも同じファイタータイプ。 新人王戦も違うブロックで、同階級にエントリーしていた。 そのせいか、よく火のでるような打ち合いをして、スパーしていた。 私が憧れていた、カリスマボクサーだったIさん。 私は、そのIさんが所属してい... 続きをみる
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「オヤジの右が当たれば・・・」 「右喰ろたらもたんやろ・・・」 「どれだけもつかな・・・」 周りの人間たちが呟く言葉が耳に入ってくる。 そういえば、Aさんが私に話してくれていた言葉を思い出した。 「腕に自信のある奴がワシらの集まりに来ても、オヤジの右喰らって立ってられた奴おらんのやで!」 ... 続きをみる
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数日後、Aさんの事務所に行った。 「おー、コブシさん!」 にこやかに出迎えてくれたAさん。 最初の対応の時と顔つきが違っていた。 (いやいや、気を付けなければ・・・) まだ私の中では、何か騙されるんじゃないかと警戒していた。 近くのファミレスみたいなところで夕食をとることになった。 「いや... 続きをみる
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両親との約束、4年間は私の好きにしていい。 私の全力疾走は終わった・・・。 親に抗う理由もなく、家業の養成所に入った私。 規定の過程を経て、養成所を無事卒業。 卒業後、普通なら一職員として、16歳の頃に世話になったDグループ会社に勤める予定だった。 ところが、ある縁からKグループ会社の社長... 続きをみる
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翌日、正式にジムに引退の挨拶に行った。 ジムが一番活気づく夜の7時。 「お願いしまーーすっ!」 ジムに着き、いつもしていたように大きな声で挨拶をした。 「ちわーーすっ!」 いつもの面々たちが元気よく返してくれる。 「おーーっ、コブシ!」 「久しぶりです、コブシさん!」 仲間たちと会うのは... 続きをみる
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減量、試合、思いっきり飲み食いする。 このサイクルで3年間過ごしてきた私。 おそらく試合が出来ない体。 でも、これは夢なんじゃないか? 頬をつねるなんて甘いと思った私。 何度も何度も何度も、結構強く自分の頬を張った。 ヤッター!これで試合せずに済む! あんなに毎試合毎試合思ってただろ? 天変... 続きをみる
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マネージャーも、勢いにのった私に、攻めのマッチメイクをしてきた。 元日本ランカーのY選手。 名前は聞いた事があった。 戦績は私と同じ、6勝(3KO)3敗。 私と同じ戦績で、日本ランクまで入った事がある。 すなわち、強い相手とやってきている証である。 これは、相当気合いをいれなければいけない... 続きをみる
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ただの6回戦。 しかし、私にとっては自分が男でいられるかどうかの大一番。 試合当日。 後楽園ホールとは比べ物にならない小さな会場。 入っても1000人くらいだろうか。 メインの選手の故郷らしい場所。 別にタイトルマッチでもないので、客の入りも今一つ。 俺はここで終わってしまうかもしれない... 続きをみる
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「勝者~青コーナー!」 判定が出た瞬間、頭をうなだれる私。 リングサイドに立っていたマネージャーと私のトレーナーの二人が、優しくうなだれた私の頭を撫でてくれた。 この試合のビデオは、今でもたまに見てしまう。 ビデオを撮っていた私の後輩も、本当は黙って撮らなければいけないのに、最終ラウンドに「倒せ... 続きをみる
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しかし、目の事はトレーナーに話していなかった。 なんとなく、網膜剥離の前兆のような気がして、もし、そうなったら引退しなければいけなかったからだ。 私はガードがあまりうまくない。 というか、わざと打たすところがあった。 パンチが当たっているのに、グイグイ前に出てこられると、自分のパンチに自信がなく... 続きをみる
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今までの相手とは比べ物にならないくらいスピードのあるジャブを矢継ぎ早に打ってきた。 いろんな角度から数発打たれ、そのスピードに面食らっていた私。 次の瞬間。 気が付いた時には、右のストレートが私の顎を打ち抜いていた。 それもピンポイントに顎の先端の急所にヒットした。 はじめて感じた、角材で貫か... 続きをみる
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試合会場は名古屋。 相手は名古屋で期待されていた無敗のホープ。 私みたいな叩き上げは、ブランク明けといえど、ハードなマッチメイクになる。 しかし、そこで生き残ってこそ、上にいける。 自分でもそれは理解していた。 会長の孫なんかは、大事に慎重なマッチメイクで、訳のわからないフィリピン人なんか... 続きをみる
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私の現役時代・・・ Мさんとの約束通り、20歳になる目前の19歳で、東京後楽園ホールでデビュー。 人気のある日本チャンピオンの前座。 相手は、その日本チャンピオンが所属しているジムの選手。 アマチュアで数戦のキャリアのある相手。 だいたいメインの選手が所属するジムの興行では、そのジムに有利なマ... 続きをみる
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今から16年前の話。 1本の電話。 「コブシか・・Tがな・・Tが自殺したんじゃ・・・。」 会長の声は力なく、いつもの勢いはなかった。 それがショックの大きさを物語っていた。 T君が自殺?何故? T君は私よりも7つほど下だった。 私が7年振りにカムバックするため、T君が所属していたジムで1... 続きをみる
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【まだまだ、夢の中・・・】 試合は昼の1時半開始だった。 会場に入る前に、初めて用意されていた白衣をスーツの上に着た。 白衣を着るのは、実は2度目だった。 小学生の頃、学芸会で「みこみなし病院」という手術している患者の腹から、バケツや本などありえない物を出すという、しょーもない劇で院長役を... 続きをみる
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10年ほど前、あるボクシングジムの会長から久しぶりの電話。 「コブシ君、ちょっと頼みがあるんだ・・・」 その会長に私は大変な恩義があった。 だから、自分にできる事だったら何でも引き受けようと思った。 ただし、モチロン犯罪行為を除いて。 「リングドクターがな・・・」 数日後に迫った、ジムの興行... 続きをみる
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今年のクリスマス・・・ 我が家の歴史に残る『サンタ事件』がおこった。 娘も小6。 いろんな情報が溢れている現代。 友達やネットで調べる等で、サンタなんか“いない”事など、容易にわかるだろう。 昨年の時点でも、友達から「サンタって親なんよ!」って言われて若干、疑惑があった。 それでなくても、去年、... 続きをみる
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「あのな、コブシちゃん・・・ナツコのことなんやけど・・・。」 マスターは苦虫を噛んだような表情で続けた。 「実は・・・俺の子、妊娠して、もうちょっとしたら、店をしばらく休むねん・・・。だから・・・コブシちゃん、ボクシングやんなよ!」 「へ・・・?」 マスターの子ってことは、つまり、そういう関係... 続きをみる
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私は興味なさそうなフリをして、その紙を受け取った。 “店もうちょっとで終わるから、どっか行こ!” ナツコさんの顔を見た。 今まで見てきた中で、最高に可愛い笑顔だった。 クールに決めようとしていた私だったけれど、我慢出来ずにニヤケ顔になっていた。 店の会計を済まし、店の外で待っているように言われ... 続きをみる
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今から30年くらい前の話。 16歳でいろいろあり、家を出され、ある施設に預けられた私。 労働基準法?知ったこっちゃねぇ! 今じゃ考えられないんだけれど、朝早くから夜9時10時まで働かされていた。 休みなんてほとんどなく、あっても事務所の電話番という軟禁されたような休みくらい。 「上等だよ!... 続きをみる
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私たちは恐る恐る交番に入った。 Nが口から泡を飛ばす勢いで熱心に自分の受けた被害を警官に訴えていた。 それを、呆れたような顔をして二人の警官は聞いていた。 「もう、常連でね~。」 一人の警官が、中に入った私たちにそう言った。 聞けば、近所の住民と揉めては交番に駆け込んでくるとのことだった。... 続きをみる
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「コブシちゃん、助けてあげて!」 今から20年ほど前、妻と付き合っていた頃の話。 妻の親友のシングルマザーのHちゃん。 女手ひとつで、2人の子供を頑張って育てていた。 しかし、ある男に悩んでいた。 その男は、Nというアパートの1階に住んでいるHちゃんの向かいにある一軒家に、母親と二人で住んで... 続きをみる
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先日、妻と2週間振りの営み。 子供たちが寝静まってからなんて危険過ぎる。 なので、だいたい、私が休みで、子供たちが学校に行った後、即ち午前中にするのが通例だった。 子供たちが学校に行き、阿吽の呼吸で私からシャワーに行った。 立ちながらボディソープを手に取り、シャワーを浴びた。 ついでに歯磨き... 続きをみる
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「コブシちゃん、話があるんだけど・・・。」 毎晩の恒例行事となっていた一戦が終わった後、神妙な面持ちでMちゃんが話し始めた。 「実はね・・・もう、生理が来なきゃいけないのに、こないの・・・。」 「えっ・・・。」 なんか、ドラマとかで聞いたセリフが、自分に向けられている事が信じられなかった。 ... 続きをみる
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深夜の駅・・・。 ポツンと立っている女の子。 田舎の駅なので、Mちゃんの存在はすぐにわかった。 「あ、俺・・・コブシやけど・・・。」 振り向いたMちゃん。 緊張のご対面。 (めっちゃ可愛い!) ブサイクだった時の事も想定していた私の心配など、ぶっ飛ばすくらいの可愛さだった。 間違いなく、... 続きをみる
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私が20歳の頃の話。 19歳でプロになり、デビュー戦を1RKOし、そのままの勢いで新人王トーナメントへ。 連勝を重ね、準決勝戦で初黒星。 その頃の私は、連戦のダメージで、パンチを打つ度に腰に激痛が走るという最悪の状態。 腰の治療の為、半年間ブランクを作った。 そして、腰の具合も回復してきたの... 続きをみる
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近所のファミレスに行った。 Sさんの年齢は58歳。 離婚してから、妻や子供に対する贖罪の念を忘れる事はなかったそうだ。 そのせいか、3歳の息子の事を、かわいがってくれた。 食事の後、ゲームセンターに寄った。 Sさんは、息子の為にUFOキャッチャーで、何百円も使い、ぬいぐるみを取ってくれた。... 続きをみる
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“新聞拡張員” 新聞購読契約の勧誘をし、その契約によって報酬を得る。 いきなり家に来て、あの手この手で新聞を購読してもらおうとする。 中には強引に、恫喝まがいに契約をとる人間もいる事から、「新聞ヤクザ」とも言われるらしい。 私は、この手の営業をする輩が大嫌いだ。 人間関係は鏡みたいなものだと... 続きをみる
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私が19歳の頃の話。 プロボクサーとしてデビューし、デビュー戦を1RKOで勝った。 そのままの勢いで、新人王トーナメントにすぐエントリー。 そこから3連勝し、準決勝まで駒を進めた。 私は出来が悪かったんだけれど、何故か大学に入学していた。 しかし、大学には、単位をギリギリ取れるくらいしか行ってい... 続きをみる
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私は暑い時好になると、毎朝、出勤する時にコンビニで、機械で作る180円のアイスコーヒーを買う。 いつものコンビニに入り、入り口のアイスボックスから氷が入ったカップを取る。 レジまでの数歩の間に、氷って固まっているカップを握り潰し、おサイフケータイでお支払いする。 この一連の流れが、夏の毎朝のルーテ... 続きをみる
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ある日の夕食での出来事。 家族で夕食を取りながら、録画したバラエティー番組を見ていた時の話。 こち亀というマンガの中での出来事を実証してみようという企画をしていた。 素っ裸のグラビアタレントに、サランラップをぐるぐる巻きにして、何メートル巻けば見えなくなるか?という実験だった。 若干の気まず... 続きをみる
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「おーい!皮被ってるんやったら、剥いてから、た~ぷり塗れよ!あ、それと、尿道にも塗り込むんやぞっ!」 16歳の私は、まだ、仮性包茎だった。 トイレに入って、ズボンを脱いで、皮を剥いた。 その薬をたっぷり指にとり、まだ敏感だった亀頭に塗った。 そこまでは、「うっ・・・うっ・・・。」とかで済んでいた... 続きをみる
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私は16歳で、ある施設に預けられた。 そこの先輩のDさん。 Dさんは、19歳で、私と同じく16歳でこの施設に来たらしい。 この施設で、16歳という年齢で預けられるのは、そうそうなかった。 Dさんは、相当悪かったらしく、中学生の頃からヤクザの事務所に出入りしていた。 ヤクザになるのを心配した両親... 続きをみる
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「ガチャ!!」 嫁が、勢いよく居間の扉を開けた。 「アンタっ、何してん?」 「お、おぉ・・・ど、ど、どしたん?」 そこには、捨てられた仔犬のような目をして、パンいちでソファーに正座し、テレビ画面には、NHKの囲碁の打ち手解説。 言っておくが、季節は冬。 パンいちで、いる事自体が違和感アリア... 続きをみる
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