コブシのブログ

つれづれ駄文

1人ベストキッド

高校3年の頃。


高校2年の始めに、本格的にプロボクサーになるため夜遊びを止めた私。


 近くにボクシングジムがなかったのと、格闘技好きな友人が一緒にやろう!と、学校の近くにあるフルコンタクト系の空手道場に入門。


 私も強くなるために貪欲だったから、他の格闘技をするのも何かの役に立つだろうと思っていた。


 体の大きな相手と組み手をすると力負けしていた。


なので、週に3日空手道場、後2日をウェイトトレーニングジムにも行って鍛えていた。


まさにその頃は、格闘技の事しか考えていなかった。


 1年くらいそんな生活を送っていた。


 自分でも、だいぶ体つきも変わったし、実力も上がってきたと思っていた。


 一緒に行っていた友人も強くなっていた。


 友人は昇段試験を受けて、帯の色も白から黄色、緑と変わっていった。


その一方、私には休日もとれない環境で仕事もしていたので、休みが調整出来ず昇段試験が受けられなかった。


 「最強の白帯」


 道場で私につけられたあだ名。


 最強と呼んでもらえる事に、それはそれで嬉しかったけれど、白帯というのがイヤだった。


ちょうどその頃、通えそうなボクシングジムを見つけたという事もあり、空手を止めようと思っていた。


 「最強の白帯」である私が、どれだけやれるのか?


そう考えていた私が、空手を止める最後のケジメとして考えた事。


 無所属、単身で、格闘技の大会に出場する。


 今考えても恐ろしくなる。


 若いという事は、こんなにも怖いものなしかと、つくづく思う。


 格闘技雑誌を定期的に購入していた私は、関東で自衛隊が主催していた徒手格闘技の試合にエントリーした。


 「武魂塾」


 武士の魂。


 私なりに考えた団体名。


その代表という事にして申し込んだ。


その頃、関西に住んでいた私は、自分でビジネスホテルを予約して、前日から前乗りで行った。


 今考えても、スゴい行動力だったなあと我ながら思う。


 試合当日。


 会場は大きな体育館。


 皆、道場単位で来ていた。


そして、「武魂塾」代表の私は一人きり。


どんだけメンタル強いねん。(笑)


そして、試合が始まった。


試合は、顔面に宇宙飛行士みたいな防具、腹は剣道の胴みたいな防具を着け、打撃、投げ、関節と何でも有りのルール。


 高校生の部で、体重は無差別だった。


 1回戦


 相手は、私と同じくらいの体格。


 「はじめっ!」


 審判の掛け声と共に始まった。


 数発のパンチと蹴りの応酬。


 気が付くと、私は相手に馬乗りになり、叫びながら殴っていた。


 「止めっ!止めっ!」


 馬乗りになって、殴っている私の手を審判が掴んだ。


 私は、審判の声がまったく聞こえなかった。


 今考えると、この時に自分の中での格闘の野性が覚醒したんだと思う。


 2回戦


 相手は、168㎝の私に対して、180㎝くらい有った。


ずっと興奮状態の私は、試合内容を覚えていない。


 気が付くと、倒れてはいないけれど、顔面に良いのを数発入れられ1本負けをした。


 武魂塾代表の闘いは、敢えなく2回戦負けという結果で終わった。


しかし、この経験は私にとって、非常に価値があった。


 誰も知り合いがいない、たった一人ぼっちでの孤独な闘い。


その後のプロの試合で、肝が座ったというか、クソ度胸がついた。


しかし、若気の至りというかなんというか、今の私では考えられない行動力だった。